ドーベルマンが海兵隊の「公式軍用犬」だった話

犬の雑学・歴史
2026.08.29|更新 2026.08.31|4 MIN READ|DOBERMANN / ALWAYS FAITHFUL

ベルを連れて歩いてると、たまに二度見される。別に威嚇してるわけでもないのに、ドーベルマンってだけで身構えられる。まあ気持ちは分かる。あの耳とあの体つきは、確かに「近寄るな」って顔してる。

で、今更だけどちゃんと調べてみた。あのいかつさ、ただの見た目の話じゃなかった。ドーベルマンは第二次世界大戦で、アメリカ海兵隊の「公式」軍用犬に選ばれてた犬種だった。ちょっと誇らしい。

海兵隊、ドーベルマンを選ぶ

1943年、海兵隊は軍用犬部隊を立ち上げた。候補にはジャーマン・シェパードなんかも挙がってたが、アメリカ・ドーベルマン・ピンシャー・クラブが訓練用に20頭を提供したのをきっかけに、1943〜1945年、ドーベルマンが海兵隊の「公式犬種」になった。この犬たちには「Devil Dogs(悪魔の犬)」というあだ名がついた。第一次世界大戦でドイツ兵が海兵隊員自体を呼んでいた呼び名を、そのまま受け継いだものらしい。

理由は単純だ。短毛だから南太平洋の蒸し暑いジャングルでも動ける。感覚が鋭くて訓練の飲み込みが早い。体力がある。要は「暑さに耐えて、賢くて、頑丈」。……うちのベルが真夏に日陰から一歩も出てこないのを見てると、正直この評価をそのまま信じていいのか怪しくなってくるのだが。まあ80年前の先輩たちは、もっと屈強だったんだろう。

硫黄島の軍用犬ドーベルマンButchとハンドラー
ドーベルマン「Butch」とハンドラーのRez Hester一等兵、硫黄島にて(1945年、パブリックドメイン、出典: Wikimedia Commons / U.S. Army Signal Corps)

海兵隊はこの犬たちを斥候や伝令として使った。地雷や罠を嗅ぎ分ける、寝てる兵士の見張りをする、洞窟に隠れた敵を先に察知する。Military.comの記事によれば、グアムの戦いだけで60頭近くのドーベルマンとシェパードが投入されて、450回以上の哨戒任務をこなしたという。訓練を受けた犬たちは、人間の兵士より先に危険に気づくことが多かったそうだ。ガチで頼れる相棒だったんだと思う。

カートという1匹の話

その中に、カートという名前のドーベルマンがいた。

1944年のグアム、カートは自分の分隊の前方に日本兵の大部隊が潜んでいるのを察知して、仲間に知らせた。おかげで250人の海兵隊員が助かったという。ただその直後、迫撃砲の攻撃でカート自身も、ハンドラーだったアレン・ジェイコブソン一等兵も負傷した。ジェイコブソンは、自分より先にカートを避難させるまで治療を拒んだと伝えられている。

犬に助けられた人間が、その犬を先に助けようとする。美談として片付けたくなるが、これは迫撃砲が飛んでくる戦場の話だ。

海兵隊のドーベルマン軍用犬とハンドラー1945年
海兵隊のドーベルマンとハンドラー、1945年2月撮影(CC BY 2.0、出典: Wikimedia Commons / USMC Archives)

25頭の名前が刻まれた石碑

カートを含め、グアムの戦いで25頭の軍用犬が命を落とした。1994年、グアム解放50周年に合わせて、その25頭の名前を刻んだ慰霊碑「Always Faithful(常に忠実に)」がグアムの海兵隊基地に建てられた。Wikipediaの記事によると、これはアメリカで最初に作られた公式の軍用犬慰霊碑だという。台座の上に立つのは、カートをモデルにしたというドーベルマンのブロンズ像だ。海兵隊のモットー「Semper Fidelis(常に忠実に)」を、そのまま彫刻のタイトルにしている。

生き延びた犬たちを含め、この部隊は合計40個のパープルハート章(名誉負傷章)を受けている。犬に勲章、というと変な感じもするが、当時の海兵隊にとってはそのくらい本気の話だったということだと思う。

見た目のイメージと、中身は別

ドーベルマンが「怖い犬」というイメージを持たれてる背景には、こういう軍用犬・警察犬としての歴史も間違いなくある。映画やドラマの悪役犬のイメージだけじゃなく、実際に軍が「警戒心が強くて頑丈だから」という理由で選んで使ってきた過去があるわけだから。

とはいえ、ドーベルマンの血が全員に海兵隊仕込みの気概まで運んでくるわけじゃない。前に「ドーベルマンの”怖いイメージ”は映画が作った説」を検証した記事でも書いたけど、うちのベルも見た目ほど強そうな性格はしてない。80年前の先輩たちに、ちょっと顔向けできない。


ドーベルマンやベルの日常は、YouTubeチャンネル「狂犬の正体」でも発信中。ブログのトップはkyokench.comからどうぞ。

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