世界の「有名なドーベルマン」たち――映画の悪役じゃない、本当にいた名犬の話

ベルとの暮らし
2026.08.17|更新 2026.08.31|4 MIN READ|DOBERMANN / LEGENDARY DOBERMANS

映画に出てくるドーベルマンって、なんか物騒な役が多い気がする。銀行強盗団に使われたり、犯罪組織のボスの相棒だったり。調べてみたら本当にそういう映画が何本もあった。うちのベルはソファでひっくり返って寝てるだけなのに、と思いながら見てて、逆に気になった。フィクションじゃなくて、実際に歴史に名前が残ってるドーベルマンって、どんな犬たちなんだろう。

有名なドーベルマンたちのイメージ

調べたら、想像してたのと全然違う顔が3つ出てきた。仲間を救った犬、ドッグショーの頂点に立った犬、そして最近もまた新しく歴史に名前を刻んだ犬。順番に紹介したい。

仲間を救って死んだ”カート”

1944年、太平洋戦争のグアム島。アメリカ海兵隊は、日本軍からこの島を奪還するための戦闘に入っていた。この作戦に、ドーベルマンを中心とした軍用犬の部隊が同行していたのは、あまり知られていない話だと思う。

その中の1頭が「カート」という名のドーベルマンだった。夜間のパトロール中、カートは前方に日本軍の大部隊が潜んでいることをハンドラー(担当兵士)に伝え、迫撃砲による攻撃が始まる前に部隊を撤退させた。この時カートが警告を出さなかったら、眠っていた250人の海兵隊員が奇襲を受けていたと言われている。カート自身はこの時の攻撃で致命傷を負い、ハンドラーのアレン・ジェイコブソン一等兵と共に、このグアム戦で最初に命を落とした軍用犬になった。

今もグアムの海軍基地には、この戦闘で亡くなった25頭の軍用犬(その大半がドーベルマン)を追悼する「戦没軍用犬慰霊碑」がある。碑の上には、耳を立てて伏せの姿勢を取るドーベルマンの像が置かれていて、「Always Faithful(常に忠実)」というタイトルが付けられている。1994年、戦闘から50年の節目に除幕式が行われた。

グアムの戦没軍用犬慰霊碑

グアム海軍基地にある戦没軍用犬慰霊碑。25頭の名前が刻まれており、一番上に「KURT」の名前がある(写真: Allen Shimada / NOAA、パブリックドメイン)

正直、この話を知る前は「軍用犬」って響きに、ちょっと道具っぽさというか、人間の都合で使われるだけの存在みたいなイメージを勝手に持ってた。でも碑文には「多くの生存兵が、この勇敢で犠牲になった動物たちに命を救われた」とはっきり書かれている。人間の命を背負っていたのは事実で、その重さは軽く扱っちゃいけないと思う。

ドッグショーの頂点に、これまで5回立っている

アメリカには「ウェストミンスター・ケネルクラブ・ドッグショー」という、150年近い歴史を持つ世界最高峰のドッグショーがある。毎年2月、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで開催され、その年最も優れた1頭に贈られる「ベスト・イン・ショー」は、犬の世界における最高の栄誉とされている。

ドッグショーの会場イメージ

ドーベルマンはこのベスト・イン・ショーを、これまでに5回獲得している。最初は1939年、「フェリー」という犬。次に1952年と1953年、2年連続で優勝した「ストーム」。この犬は当時、史上初めて2年連続でベスト・イン・ショーを獲った犬として話題になったらしい。そして1989年、「インディ」という犬がハンドラーのアンディ・リントン氏と共に3度目の優勝を果たした。

ここまでなら「昔すごかった犬種」で終わる話なんだけど、面白いのはここから。2026年2月、第150回目という節目のウェストミンスターで、「ペニー」という4歳のドーベルマンがベスト・イン・ショーを獲得した。しかもハンドラーは、1989年にインディを優勝に導いた、あのアンディ・リントン氏。37年の時を経て、同じ人がまた別のドーベルマンを頂点に導いたことになる。審査員はこの年のラインアップを「これ以上ないもの」と評したそうだ。

ベルを見てても、ドーベルマンって「かっこよく立つ」のがとにかく似合う犬種だなと思うことがある。あの姿勢や佇まいそのものが、100年近く前から評価され続けてきたんだと思うと、ちょっと誇らしい。

2001年9月、瓦礫の中に入っていった”サニー”

2001年9月11日、アメリカ同時多発テロが発生した。世界貿易センタービルの崩落現場には、全米各地から400頭以上の災害救助犬が派遣され、生存者の捜索にあたった。派遣された犬種は16種類以上にのぼるが、その中にドーベルマンもいた。

カリフォルニア州から「カリフォルニア・タスクフォース3」というチームの一員として現地入りしたのが、ドーベルマンの「サニー」だった。サニーは9月19日から30日まで現場に留まり、生存者を見つけたら吠えて知らせるよう訓練された捜索犬として働いた。瓦礫の粉塵、崩れやすい足場、終わりの見えない作業――過酷な環境だったことは想像に難くない。

正直、この話を調べるまで「災害救助犬」と聞いてイメージするのはラブラドールやジャーマンシェパードばかりだった。ドーベルマンがその現場にいたことは、あまり語られていないんじゃないかと思う。

怖がられがちな犬種だからこそ、知ってほしい話

カート、ストームやペニー、サニー。3つとも全然違う場所での話だけど、共通してるのは「与えられた役割にちゃんと応えた」ということだと思う。番犬として、ショーの舞台で、災害現場で。ドーベルマンは見た目の迫力から怖がられることも多い犬種だけど、その中身は「頼まれたことに真剣に応える」タイプの犬なんじゃないかと、ベルと暮らしてても感じる。

映画の中の物騒なドーベルマンも嘘ではないんだろうけど、それだけがこの犬種の顔じゃない。うちでソファを占領してるベルも、こういう犬たちの血を引いてるんだなと思うと、いつもの寝顔もちょっと違って見えてくる。

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