ドイツで犬を連れたホームレスが多い理由を調べたら、想像以上に闇が深かった

犬の雑学・歴史
2026.08.01|更新 2026.08.31|5 MIN READ|DOBERMANN / DOGS AND HOMELESSNESS IN GERMANY
ドイツで見かけた光景のイメージ
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僕のようなSNSで犬の動画を配信している活動をしていると、視聴者さんからよく言われる批判コメントがある。それは「犬の扱い方がなっていない!ドイツを見習うべきだ!」と。

そんなことをずっと言われ続けていたので、じゃあ実際に見に行ってみるか!ということで、2週間ほどドイツのベルリンに犬事情を調査しに行った時の話。

何回も同じ光景に出くわした。街の広場とか、駅の近くとか、人通りの多い場所に座ってるホームレスが、結構な割合犬を連れている。道行く人がその犬を見つけて、しゃがんで撫でて、話しかけて、それからお金を渡していく。それも一人二人じゃなくて、次から次へと。

正直、最初に見た時は「犬と人の距離が近い国だからこその、微笑ましい光景」くらいに思っていたのだが、現地のティアハイム(ドイツの動物保護施設)でボランティアをしている日本人の方とお話しする機会があり、こんな話を聞いた、

「噂では、犬を飼ってると道行く人からお金を恵んでもらえる確率が上がるらしいよ。中には、それで補助金みたいなのをもらいながら生活してるホームレスもいるって聞いたことがある……」

本人も「人から聞いた話で、本当かどうかは分からない」と前置きしていたけど、気になったので両方ちゃんと調べてみた。結果から言うと、俺が知っていたドイツとは違う顔がそこにはあった…

「補助金で生活してる」は都市伝説だった

まず「犬を飼ってる人には補助金が出る」という話。これは調べた限り、公式な裏付けはどこにも見つからなかった。ドイツ政府の公式ポータルには、むしろ「経済的余裕がないという理由だけでは犬税の免除対象にならない」とはっきり書かれている。制度で得してる、という話ではなかった。

出典: Bundesportal(ドイツ連邦政府の公式行政ポータル)

「恵んでもらえる確率が上がる」の方は、噂どころじゃなかった

ドイツの動物保護団体Arche 90(ドルトムントを拠点にしてる団体)の報告によると、ベルリン、ミュンヘン、パッサウといったドイツの大都市では、これはもう「よくある話」で、ドルトムントでも同じ手口が確認されたという。物乞いをさせるグループ、いわゆる「物乞いマフィア」が、長年にわたって身体に障害のある人や赤ちゃん連れの女性を路上に送り込んできたけど、その最新の手口が「子犬を同情のエサに使う」ことだったらしい。

ただし、この団体自身が「これは、長年連れ添った動物と一緒に路上にいる本物のホームレスの人たちの話ではない」とはっきり書いている。組織的に動物を利用した物乞いと、本物の絆で犬と暮らしてる人は別物であって、犬を連れているホームレスが全員悪人というわけじゃない。

出典: Arche 90 e.V.(ドイツ・ドルトムントの動物保護団体)

驚いたのはここからで、この物乞いの「黒幕」は、ネット上の個人売買サイトや駐車場、路地裏で格安の純血種の子犬を売ってる連中と同じ人物たちだという。子犬は主に東欧から輸入されてきたもので、母犬は薄暗く不衛生な繁殖施設の檻に閉じ込められ、年に何度も無理やり出産させられている。そして、物乞いに使われた子犬は、可愛い赤ちゃんの時期を過ぎて「使えなく」なると、平気で処分されてしまうという。可愛い子犬でないと物乞いとして稼げないからだ。日本でも度々話題に上がっている悪徳ブリーダーと同じようなものだろう。

ドルトムント市の担当部署も繰り返し取り締まろうとしたけど、犬の(おそらく偽造された)ワクチン接種証明書を提示されると、その場で没収する手立てが無いという。市の職員や警察からも「深入りするな」と忠告されているそうだ。理由は、路上にいる物乞いの人自身も組織の下働きに過ぎず、下手に関わると暴力沙汰になりかねないから。道端で見かける「子犬を愛おしそうに撫でてる姿」も、道行く人から小銭を引き出すための演技だという。

つまり道端で見かけるあの子犬は、その人が大事に育ててる自分の犬ではなく、東欧の劣悪な繁殖施設から密輸され、同情を引くためだけに使い捨てられてる「道具」かもしれない。人は子犬を連れた人には同情しやすく、財布のひもも緩む。それを見越した黒幕が、犬を集金装置として扱ってる、というのがこの話の正体だった。同情してお金を渡した人たちのほとんどは、そんなことは想像もしていないと思う。俺も知らなかった。

もちろん、全部がこれというわけじゃない

誤解のないように書いておくと、路上生活者と犬の間に本物の絆があるケースも、実際に報告されている。ある学術誌の調査では、路上生活を経験している若者のうち、ペットを飼っている332人中64%が「自分の犬が身を守ってくれる存在だ」と回答していて、犬を飼っている路上生活者はうつ症状や孤独感を訴える割合が低い、という報告もある。

出典: Anthrozoös: Homeless People and Their Dogs

問題は、本当に絆で繋がってる人と、子犬を道具として使い回してる組織的なグループが、傍から見ると全く見分けがつかないことだ。だから通りすがりの俺たちには、全部が「心温まる光景」に見えてしまう。

まとめ

日本ではドイツというと「犬に優しい国」「殺処分がない国」というイメージで語られがちだ。でも今回調べて分かったのは、そのイメージの裏側で、犬を金儲けの道具として使い捨てる連中がちゃんと存在していて、現地の動物保護団体がそれを止めようと声を上げている、という現実だった。

「海外に行ってきました」系のテレビ企画や、SNSの数十秒の切り抜きでは、こういう部分は絶対に映らない。分かりやすくて微笑ましい表側だけが流通して、それが「ドイツは犬大国」という一人歩きしたイメージになる。今回、現地で長く動物と関わってる人たちの話を聞いて、俺はそのイメージをだいぶ改めることになった。

kyokench.com のトップページでは他の記事も見れるので、良かったら覗いてみてほしい。あと、YouTubeチャンネル「狂犬の正体」もチェックしてもらえたら嬉しい。

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