なぜドーベルマンには鎖の首輪が似合うのか ― 鎖じゃなきゃダメな、ちゃんとした理由があった

ベルとの暮らし
2026.07.28|更新 2026.08.31|8 MIN READ|DOBERMANN / CHAIN COLLAR

前に「チョークチェーン(鎖の首輪)」についてYouTubeで動画を出したことがあって、これが171万回再生まで伸びた。コメント欄は正直かなり賛否両論だった。「可哀想」「虐待みたい」という声も多かったし、逆に「これが正しい使い方なんだ」という声もあった。今日は改めて、この道具について、歴史的な背景・仕組み・そして反対意見までちゃんと調べて書いておきたい。

チョークチェーンって結局何なのか

まず大前提として、これは「引っ張って犬を痛めつける道具」だと勘違いされがちなんだけど、正しく使えばそうじゃない。引くとキュッと締まって「ガチャッ」と音が鳴る。この音そのものが合図になって、興奮状態の犬の意識をこっちに戻す道具として作られてる。締め続けて苦しめるのが目的じゃなく、あくまで一瞬の合図。引けば引くほど締まる、締まれば締まるほど言うことを聞く、みたいな単純な力の道具じゃない。むしろ締め続けると犬はもっと興奮してしまうので、それは間違った使い方になる。

スリップチェーン(チョークチェーン)首輪の実物写真
チョークチェーン(スリップチェーン)の実物。輪が二重になっていて、引くと内側の輪が締まる構造になっている 出典: Wikimedia Commons(Elf, CC BY-SA 3.0)

起源をたどってみた

海外の資料を調べてみると、鎖タイプの訓練用カラーを商業的に最初に作ったのは「Herm Sprenger(ヘルム・シュプレンガー)」社だと広く認識されていて、そのプロトタイプは1876年まで遡るらしい。

出典: Lionheart K9

面白いのが、これがドイツの会社だということ。ドーベルマンの発祥も同じくドイツで、初期の交配が進んでいたのがまさにこの時期(1870〜1890年代)。つまりチョークチェーンとドーベルマンは、同じ時代・同じ国の「使役犬文化」の中でほぼ同時期に生まれてきた道具と犬種、と言えるかもしれない(このあたりは前に書いたアポルダの記事も参考にしてほしい)。

その後、本格的に軍・警察の訓練プログラムで使われるようになったのは第一次世界大戦の頃で、ドイツとイギリスが早い時期に軍用犬の訓練プログラムを整備したと言われている。第二次世界大戦では、アメリカが1943年に「War Dog Program」を立ち上げ、バージニア州フロントロイヤルに訓練センターを作って1万1000頭もの犬を徴用した。当時のチョークチェーンの中には、リング部分に「U.S. WAR DOG」と刻印されたものもあったらしい。ドイツでは1900年代の終わり頃までに600以上の都市で警察犬が群衆整理などに使われていたという記録もある。

出典: Lionheart K9

日本での普及時期については、はっきりした資料が見つからなかった。ただ俺自身、ベルと一緒に1ヶ月ほど訓練所に通った経験があって、そこで訓練士さんに直接使い方を教わり、その場で購入したのが今使ってるタイプの元になってる。軍用犬・警察犬・使役犬の訓練文化を通じて世界的に広まり、日本にも訓練所文化として伝わってきた道具、というのが俺の理解(これは実体験からの推測で、断定できる歴史資料があるわけではないので、その点は正直に書いておく)。

「痛みで矯正する」という考え方は、いつ・どこで広まったのか

これはコメントでも聞かれたことがあるんだけど、「痛み・苦しさで矯正する」っていう使い方は、そもそもの発案者が考えた正しい使い方だったのか、それとも誰かが間違った使い方を広めたのか、ちゃんと調べてみた。

まず、チェーン自体を商品化したHerm Sprenger社(ドイツ)自身がどういう使い方を教えていたかを示す資料は見つからなかった。これは正直に「分からない」と書いておく。

分かったのは、「罰(嫌悪刺激)をベースにした訓練法」そのものを体系化したのはKonrad Most(コンラート・モースト)というドイツ人で、1910年に出した訓練マニュアル『Training Dogs』がその出発点になっているということ。この手法はドイツ政府にも採用されて信頼性を得て、そこから一般にも広まったとされてる。

出典: NAIA(National Animal Interest Alliance)

その後、これをアメリカで徹底的に主流化させたのがWilliam Koehler。1962年に出した『The Koehler Method of Dog Training』という本が長年ベストセラーになって、強いリードジャーク(首を締める矯正)・投げ鎖・電気ショックまで含んだかなり厳しい矯正法をアメリカ中に広めた。

出典: NAIA(National Animal Interest Alliance)

つまり、「痛み・苦しさで矯正する」という使い方は、特定の誰かが間違って広めた”誤用”というより、20世紀のほとんどの期間、ドイツで体系化され、アメリカで徹底的に主流化された、当時の”正しい”訓練法そのものだったっていうのが調べた上での結論。今のAVSABみたいな「嫌悪刺激は絶対NG」という立場は、その長年の主流派に対して、近年の動物行動科学が出してきた新しい反論、という位置づけの方が正確だと思う。

じゃあ今のドイツは、これをどう見てるのか

ここまで読んで気になったので、体系化した本人であるドイツが今この道具をどう見てるのかも調べてみた。

結論、今のドイツはかなり否定的。まずスパイク付きの「プロングカラー」は2022年から訓練での使用が法律で禁止されてる。オーストリア・スイス・スウェーデン・スペインなども同様に禁止済み。

出典: EWASH / 出典: Phoenix Dog Training

今回の主役である「普通のチェーン(チョークチェーン)」自体は、国全体で名前を挙げて即アウトにする法律はまだ無いものの、ドイツ獣医師団体(TVT)は使用を推奨しておらず、動物保護法(Tierschutzgesetz)第3条の「苦痛を与える手段の禁止」に触れる”ボーダーライン”として扱われてる。ニーダーザクセン州のように、州レベルで明確に禁止している地域もある。

出典: VIER PFOTEN

正直な話、この歴史を踏まえた上でドイツの今の態度を見ると、ちょっと笑ってしまう部分もある。1910年に罰ベースの訓練法を体系化して世界に広めた側の国が、100年以上経った今になって「これは動物福祉的にアウトです」と真っ先に禁止し始めてるのは、なんというか、ものすごくご都合主義だなと。散々自分たちが広めてきたものを、今さら手のひら返しで否定するあたり、良くも悪くも「ドイツ人らしい」なと感じてしまった。

なぜハーネスを使わないのか

動画でも話したことだけど、うちがハーネスを使わない理由はちゃんとある。ベルが急な刺激(視界に他の犬が飛び込んでくる、みたいな場面)で興奮した時、ハーネスだと体全体で踏ん張られるからこっちが引きずられる。大人でも普通に引きずられる力がある。チョークチェーンなら首元の一点でしっかり止められるから、片手でも制御できる。

あと、これは意外と大事なポイントなんだけど、ドーベルマンみたいな「見た目が怖いと思われがちな犬種」を飼ってる場合、周りの人にどう見えるかも考えなきゃいけない。もし興奮して引きずられてる姿を見せてしまうと、「あの人は自分の犬を制御できていない」という印象を周りに与えてしまって、犬種全体の印象も悪くしてしまう。しっかり制御できている姿を見せることも、飼い主の責任の一つだと思ってる。

チョークチェーンを首の上部につけた犬の写真
正しい位置は耳のすぐ下、首の一番上。鎖骨や胸元だと効果がほとんど無くなる 出典: Wikimedia Commons(Jim Pennucci, CC BY 2.0)

正しい使い方(動画でも話した内容)

  • 付ける位置: 鎖骨・胸元あたりだと効果がほぼ無くハーネスと同じになる。耳のすぐ下、首の一番上の位置につけるのが正しい
  • 向き: 引いた時にサッと緩む向きで通す。逆向きだと締まったままになってしまうので、ここは要注意
  • サイズ: 指2本くらいの余裕を目安にする。緩すぎても外れやすく、キツすぎても常に締まった状態になってしまう
  • チェーンの太さ: 細いタイプは見た目はスマートだけど、短毛種は擦れて毛が薄くなりやすい。ドーベルマンのような短毛種には太めのタイプの方が向いてる

反対意見もちゃんと書いておく

ここまで使い方の話をしてきたけど、正直に言うと、この道具は動物行動学の専門家の間ではかなり評価が低い。アメリカ獣医動物行動学会(AVSAB)は、チョークチェーン・プロングカラー・電気ショックカラーなどの「嫌悪刺激を使う道具」は、どんな状況であっても使うべきではないという立場を明確に示していて、報酬ベースのトレーニングのみを推奨している。学習の抑制や、恐怖・攻撃性の増加につながる可能性がある、というのが根拠になっている。

出典: AVSAB(アメリカ獣医動物行動学会)

これは無視できない、まっとうな指摘だと思う。締め付けに上限がない使い方を続ければ気管や首への負担になるし、緊急時に外れる機構が無いので着けっぱなしにするのも危険。鼻や首が細い犬種にはそもそも向かない。うちの場合も、留守番中や家の中では必ず外してるし、これから躾を始める段階の犬にいきなり使うようなものでもないと思ってる。

それでも、俺はこう考えてる

専門家の意見を知った上で、それでも俺は今のやり方を続けてる。理由は、ベルという一頭の犬と何年も向き合ってきた中で、この道具が「今のベルとうちの生活」には合っていると実感してるから。ただこれは「みんなにおすすめする正解」ではなく、あくまで「俺とベルの場合の話」として書いてる。

犬の躾に「絶対の正解」はないと思ってる。飼い主の性格、犬種の性質、その犬自身の性格を考えた上で、獣医師やトレーナーの意見も聞きながら、自分とその犬に一番合う方法を見つけるのが一番だと思う。当時の動画も貼っておくので、興味あれば見てほしい。

うちで今使ってるのはこのタイプ。

ONSのチェーンカラー(サイズ40)
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kyokench.com のトップページでは他の記事も見れるので、良かったら覗いてみてほしい。あと、YouTubeチャンネル「狂犬の正体」もチェックしてもらえたら嬉しい。

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